鳥取で学んだこと②
鳥取で学んだこと①の続きです。
鳥取大学ではその授業内容の半分以上が牛などの大動物に関してでした。
特に印象的なのが、牛の直腸検査です。
これは大学1年の5月ごろに行われた記憶があります。つまり、高校生に毛の生えたぐらいの、獣医学の基本も知らない私たちに対する、ある種の儀式的な行事だったように思います。これから6年間覚悟して頑張れよという、先生や先輩からの伝統的な激励だと思います。
牛の直腸検査とは、直腸の壁ごしに卵巣を触診し、卵巣周期を判断する技術です。
人工授精を行うタイミングを診断するのです。
当然そんなことは当時の私たちには無理でしたが、とにかく挑戦することに意味があります。
具体的には、肩まである手袋(なぜか異様に薄い、簡単に破れそう)を装着し、牛の肛門に肩まで腕を突っ込み、直腸壁ごしに卵巣を触るのです。
牛舎には各班ごとに入って行き、終わった者が外に出てきます。終わった者の表情や雰囲気からいろんな想像を巡らせます。その不安から、とにかく全員に感想を聞く者もいました。
いよいよ私の番、牛にヨロシクと一言いい、指をすぼめて腕をツッコミました。
意外とキツい、そして暖かい。
「先生、奥から何かがきました」
「それは便です、診断の邪魔ですからかき出してください」
この時点では匂いは気にならなくなっていました。
牛に一言ありがとうと告げ、牛舎を後にしました。
とんでもない世界に飛び込んでしまったと、19歳の私が覚悟を決めた瞬間でした。
この記事を書きながら思いました。大動物の道には進みませんでしたので、あの時の牛には申し訳ない気持ちもありますが、犬と猫をたくさん助けるぞという気持ちを再確認しました。
動物医療センター とよた犬と猫の病院
院長
北原 康大